龍樹菩薩 付釈文 十首
<第一首>
本師龍樹菩薩は
智度十住毘婆沙等
つくりておおく西をほめ
すすめて念仏せしめたり
<第二首>
南天竺に比丘あらん
龍樹菩薩となづくべし
有無の邪見を破すべしと
世尊はかねてときたまう
<第三首>
本師龍樹菩薩は
大乗無上の法をとき
歓喜地を証してぞ
ひとえに念仏すすめける
<第四首>
龍樹大士世にいでて
難行易行のみちおしえ
流転輪廻のわれらをば
弘誓のふねにのせたまう
<第五首>
本師龍樹菩薩の
おしえをつたえきかんひと
本願こころにかけしめて
つねに弥陀を称すべし
<第六首>
不退のくらいすみやかに
えんとおもわんひとはみな
恭敬の心に執持して
弥陀の名号称すべし
<第七首>
生死の苦海ほとりなし
ひさしくしずめるわれらをば
弥陀弘誓のふねのみぞ
のせてかならずわたしける
<第八首>
智度論にのたまわく
如来は無上法皇なり
菩薩は法臣としたまいて
尊重すべきは世尊なり
<第九首>
一切菩薩ののたまわく
われら因地にありしとき
無量劫をへめぐりて
万善諸行を修せしかど
<第十首>
恩愛はなはだたちがたく
生死はなはだつきがたし
念仏三昧行じてぞ
罪障を滅し度脱せし
已上龍樹菩薩
天親菩薩 付釈文 十首
<第一首>
釈迦の教法おおけれど
天親菩薩はねんごろに
煩悩成就のわれらには
弥陀の弘誓をすすめしむ
<第二首>
安養浄土の荘厳は
唯仏与仏の知見なり
究竟せること虚空にして
広大にして辺際なし
<第三首>
本願力にあいぬれば
むなしくすぐるひとぞなき
功徳の宝海みちみちて
煩悩の濁水へだてなし
<第四首>
如来浄華の聖衆は
正覚のはなより化生して
衆生の願楽ことごとく
すみやかにとく満足す
<第五首>
天人不動の聖衆は
弘誓の智海より生ず
心業の功徳清浄にて
虚空のごとく差別なし
<第六首>
天親論主は一心に
無碍光に帰命す
本願力に乗ずれば
報土にいたるとのべたまう
<第七首>
尽十方の無碍光仏
一心に帰命するをこそ
天親論主のみことには
願作仏心とのべたまえ
<第八首>
願作仏の心はこれ
度衆生のこころなり
度衆生の心はこれ
利他真実の信心なり
<第九首>
信心すなわち一心なり
一心すなわち金剛心
金剛心は菩提心
この心すなわち他力なり
<第十首>
願土にいたればすみやかに
無上涅槃を証してぞ
すなわち大悲をおこすなり
これを回向となづけたり
已上天親菩薩
曇鸞和尚 付釈文 三十四首
<第一首>
本師曇鸞和尚は
菩提流支のおしえにて
仙経ながくやきすてて
浄土にふかく帰せしめき
<第二首>
四論の講説さしおきて
本願他力をときたまい
具縛の凡衆をみちびきて
涅槃のかどにぞいらしめし
<第三首>
世俗の君子幸臨し
勅して浄土のゆえをとう
十方仏国浄土なり
なにによりてか西にある
<第四首>
鸞師こたえてのたまわく
わが身は智慧あさくして
いまだ地位にいらざれば
念力ひとしくおよばれず
<第五首>
一切道俗もろともに
帰すべきところぞさらになき
安楽勧帰のこころざし
鸞師ひとりさだめたり
<第六首>
巍の主勅して并州の
大巌寺にぞおわしける
ようやくおわりにのぞみては
汾州にうつりたまいにき
<第七首>
巍の天子はとうとみて
神鸞とこそ号せしか
おわせしところのその名をば
鸞公厳とぞなづけたる
<第八首>
浄業さかりにすすめつつ
玄忠寺にぞおわしける
巍の興和四年に
遥山寺にこそうつりしか
<第九首>
六十有七ときいたり
浄土の往生とげたまう
そのとき霊瑞不思議にて
一切道俗帰敬しき
<第十首>
君子ひとえにおもくして
勅宣くだしてたちまちに
汾州汾西秦陵の
勝地に霊廟たてたまう
<第十一首>
天親菩薩のみことをも
鸞師ときのべたまわずは
他力広大威徳の
心行いかでかさとらまし
<第十二首>
本願円頓一乗は
逆悪摂すと信知して
煩悩菩提体無二と
すみやかにとくさとらしむ
<第十三首>
いつつの不思議をとくなかに
仏法不思議にしくぞなき
仏法不思議ということは
弥陀の弘誓になづけたり
<第十四首>
弥陀の回向成就して
往相還相ふたつなり
これらの回向によりてこそ
心行ともにえしむなれ
<第十五首>
往相の回向ととくことは
弥陀の方便ときいたり
悲願の信行えしむれば
生死すなわち涅槃なり
<第十六首>
還相の回向ととくことは
利他教化の果をえしめ
すなわち諸有に回入して
普賢の徳を修するなり
<第十七首>
論主の一心ととけるをば
曇鸞大師のみことには
煩悩成就のわれらが
他力の信とのべたまう
<第十八首>
尽十方の無碍光は
無明のやみをてらしつつ
一念歓喜するひとを
かならず滅度にいたらしむ
<第十九首>
無碍光の利益より
威徳広大の信をえて
かならず煩悩のこおりとけ
すなわち菩提のみずとなる
<第二十首>
罪障功徳の体となる
こおりとみずのごとくにて
こおりおおきにみずおおし
さわりおおきに徳おおし
<第二十一首>
名号不思議の海水は
逆謗の屍骸もとどまらず
衆悪の万川帰しぬれば
功徳のうしおに一味なり
<第二十二首>
尽十方無碍光の
大悲大願の海水に
煩悩の衆流帰しぬれば
智慧にうしおに一味なり
<第二十三首>
安楽仏国に生ずるは
畢竟成仏の道路にて
無上の方便なりければ
諸仏浄土をすすめけり
<第二十四首>
諸仏三業荘厳して
畢竟平等なることは
衆生虚誑の身口意を
治せんがためとのべたまう
<第二十五首>
安楽仏国にいたるには
無上宝珠の名号と
真実信心ひとつにて
無別道故とのべたまう
<第二十六首>
如来清浄本願の
無生の生なりければ
本則三三の品なれど
一二もかわることぞなき
<第二十七首>
無碍光如来の名号と
かの光明智相とは
無明長夜の闇を破し
衆生の志願をみてたまう
<第二十八首>
不如実修行といえること
鸞師釈してのたまわく
一者信心あつからず
若存若亡するゆえに
<第二十九首>
二者信心一ならず
決定なきゆえなれば
三者信心相続せず
余念間故とのべたまう
<第三十首>
三信展転相成す
行者こころをとどむべし
信心あつからざるゆえに
決定の信なかりけり
<第三十一首>
決定の信なきゆえに
念相続せざるなり
念相続せざるゆえ
決定の信をえざるなり
<第三十二首>
決定の信をえざるゆえ
信心不淳とのべたまう
如実修行相応は
信心ひとつにさだめたり
<第三十三首>
万行諸善の小路より
本願一実の大道に
帰入しぬれば涅槃の
さとりはすなわちひらくなり
<第三十四首>
本師曇鸞大師をば
粱の天子蕭王は
おわせしかたにつねにむき
鸞菩薩とぞ礼しける
已上曇鸞和尚
道綽禅師 付釈文 七首
<第一首>
本師道綽禅師は
聖道万行さしおきて
唯有浄土一門を
通入すべきみちととく
<第二首>
本師道綽大師は
涅槃の広業さしおきて
本願他力をたのみつつ
五濁の群生すすめしむ
<第三首>
末法五濁の衆生は
聖道の修行せしむとも
ひとりも証をえじとこそ
教主世尊はときたまえ
<第四首>
鸞師のおしえをうけつたえ
綽和尚はもろともに
在此起心立行は
此是自力とさだめたり
<第五首>
濁世の起悪造罪は
暴風駛雨にことならず
諸仏これらをあわれみて
すすめて浄土に帰せしめり
<第六首>
一形悪をつくれども
専精にこころをかけしめて
つねに念仏せしむれば
諸障自然にのぞこりぬ
<第七首>
従令一生造悪の
衆生引接のためにとて
称我名字と願じつつ
若不生者とちかいたり
已上道綽大師
善導大師 不釈文 二十六首
<第一首>
大心海より化してこそ
善導和尚とおわしけれ
末代濁世のためにとて
十方諸仏に証をこう
<第二首>
世世に善導いでたまい
法照少康としめしつつ
功徳蔵をひらきてぞ
諸仏の本意とげたまう
<第三首>
弥陀の名願によらざれば
百千万劫すぐれども
いつつのさわりはなれねば
女身をいかでか転ずべき
<第四首>
釈迦は要門ひらきつつ
定散諸機をこしらえて
正雑二行方便し
ひとえに専修をすすめしむ
<第五首>
助正ならべて修するをば
すなわち雑修となづけたり
一心をえざるひとなれば
仏恩報ずるこころなし
<第六首>
仏号むねと修すれども
現世をいのる行者をば
これも雑修となづけてぞ
千中無一ときらわるる
<第七首>
こころはひとつにあらねども
雑行雑修これにたり
浄土の行にあらぬをば
ひとえに雑行となづけたり
<第八首>
善導大師証をこい
定散二心をひるがえし
貪瞋二河の譬喩をとき
弘願の信心守護せしむ
<第九首>
経道滅尽ときいたり
如来出世の本意なる
弘願真宗にあいぬれば
凡夫念じてさとるなり
<第十首>
仏法力の不思議には
諸邪業繋さわらねば
弥陀の本弘誓願を
増上縁となづけたり
<第十一首>
願力成就の報土には
自力の心行いたらねば
大小聖人みなながら
如来の弘誓に乗ずなり
<第十二首>
煩悩具足と信知して
本願力に乗ずれば
すなわち穢身すてはてて
法性常楽証せしむ
<第十三首>
釈迦弥陀は慈悲の父母
種々に善巧方便し
われらが無上の信心を
発起せしめたまいけり
<第十四首>
真心徹到するひとは
金剛心なりければ
三品の懺悔するひとと
ひとしと宗師はのたまえり
<第十五首>
五濁悪世のわれらこそ
金剛の信心ばかりにて
ながく生死をすてはてて
自然の浄土にいたるなれ
<第十六首>
金剛堅固の信心の
さだまるときをまちえてぞ
弥陀の心光摂護して
ながく生死をへだてける
<第十七首>
真実信心えざるをば
一心かけぬとおしえたり
一心かけたるひとはみな
三信具せずとおもうべし
<第十八首>
利他の信楽うるひとは
願に相応するゆえに
教と仏語にしたがえば
外の雑縁さらになし
<第十九首>
真宗念仏ききえつつ
一念無疑なるをこそ
希有最勝人とほめ
正念をうとはさだめたれ
<第二十首>
本願相応せざるゆえ
雑縁きたりみだるなり
信心乱失するをこそ
正念うすとはのべたまえ
<第二十一首>
心は願より生ずれば
念仏成仏自然なり
自然はすなわち報土なり
証大涅槃うたがわず
<第二十二首>
五濁増のときいたり
疑謗のともがらおおくして
道俗ともにあいきらい
修するをみてはあたをなす
<第二十三首>
本願毀滅のともがらは
生盲闡提となづけたり
大地微塵劫をへて
ながく三途にしずむなり
<第二十四首>
西路を指授せしかども
自障障他せしほどに
曠劫已来もいたずらに
むなしくこそはすぎにけれ
<第二十五首>
弘誓のちからをかぶらずは
いずれのときにか娑婆をいでん
仏恩ふかくおもいつつ
つねに弥陀を念ずべし
<第二十六首>
娑婆永劫の苦をすてて
浄土無為を期すること
本師釈迦のちからなり
長時に慈恩を報ずべし
已上善導大師
源信大師 不釈文 十首
<第一首>
源信和尚のたまわく
われこれ故仏とあらわれて
化縁すでにつきぬれば
本土にかえるとしめしけり
<第二首>
本師源信ねんごろに
一代仏教のそのなかに
念仏一門ひらきてぞ
濁世末代おしえける
<第三首>
霊山聴衆とおわしける
源信僧都のおしえには
報化二土をおしえてぞ
専雑の得失さだめたる
<第四首>
本師源信和尚は
懐感禅師の釈により
処胎経をひらきてぞ
懈慢界をばあらわせる
<第五首>
専修のひとをほむるには
千無一失とおしえたり
雑修のひとをきらうには
万不一生とのべたまう
<第六首>
報の浄土の往生は
おおからずとぞあらわせる
化土にうまるる衆生をば
すくなからずとおしえたり
<第七首>
男女貴賎ことごとく
弥陀の名号称するに
行住座臥もえらばれず
時処諸縁もさわりなし
<第八首>
煩悩にまなこさえられて
摂取の光明みざれども
大悲ものうきことなくて
つねにわが身をてらすなり
<第九首>
弥陀の報土をねがうひと
外儀のすがたはことなりと
本願名号信受して
寤寐にわするることなかれ
<第十首>
極悪深重の衆生は
他の方便さらになし
ひとえに弥陀を称してぞ
浄土にうまるとのべたまう
已上源信大師
源空聖人 不釈文 二十首
<第一首>
本師源空世にいでて
弘願の一乗ひろめつつ
日本一州ことごとく
浄土の機縁あらわれぬ
<第二首>
智慧光のちからより
本師源空あらわれて
浄土真宗をひらきつつ
選択本願のべたまう
<第三首>
善導源信すすむとも
本師源空ひろめずは
片州濁世のともがらは
いかでか真宗をさとらまし
<第四首>
曠劫多生のあいだにも
出離の強縁しらざりき
本師源空いまさずは
このたびむなしくすぎなまし
<第五首>
源空三五のよわいにて
無常のことわりさとりつつ
厭離の素懐をあらわして
菩提のみちにぞいらしめし
<第六首>
源空智行の至徳には
聖道諸宗の師主も
みなもろともに帰せしめて
一心金剛の戒師とす
<第七首>
源空存在せしときに
金色の光明はなたしむ
禅定博陸まのあたり
拝見せしめたまいけり
<第八首>
本師源空の本地をば
世俗のひとびとあいつたえ
綽和尚と称せしめ
あるいは善導としめしけり
<第九首>
源空勢至と示現し
あるいは弥陀と顕現す
上皇群臣尊敬し
京夷庶民欽仰す
<第十首>
承久の太上法皇は
本師源空を帰敬しき
釈門儒林みなともに
ひとしく真宗に悟入せり
<第十一首>
諸仏方便ときいたり
源空ひじりとしめしつつ
無上の信心おしえてぞ
涅槃のかどをばひらきける
<第十二首>
真の知識にあうことは
かたきがなかになおかたし
流転輪廻のきわなきは
疑情のさわりにしくぞなき
<第十三首>
源空光明はなたしめ
門徒につねにみせしめき
賢哲愚夫もえらばれず
豪貴鄙賎もへだてなし
<第十四首>
命終その期ちかづきて
本師源空のたまわく
往生みたびになりぬるに
このたびことにとげやすし
<第十五首>
源空みずからのたまわく
霊山会上にありしとき
声聞僧にまじわりて
頭陀を行じて化度せしむ
<第十六首>
粟散片州に誕生して
念仏宗をひろめしむ
衆生化度のためにとて
この土にたびたびきたらしむ
<第十七首>
阿弥陀如来化してこそ
本師源空としめしけれ
化縁すでにつきぬれば
浄土にかえりたまいにき
<第十八首>
本師源空のおわりには
光明紫雲のごとくなり
音楽哀婉雅亮にて
異香みぎりに暎芳す
<第十九首>
道俗男女預参し
卿上雲客群集す
頭北面西右脇にて
如来涅槃の儀をまもる
<第二十首>
本師源空命終時
建暦第二壬申歳
初春下旬第五日
浄土に還帰せしめけり
已上源空聖人
已上七高僧和讃 一百十七首
五濁悪世の衆生の
選択本願信ずれば
不可称不可説不可思議の
功徳は行者の身にみてり
天竺 龍樹菩薩
天親菩薩
震旦 曇鸞和尚
道綽禅師
善導禅師
和朝 源信和尚
源空聖人 已上七人
聖徳太子 敏達天皇元年
正月一日誕生したまう
当仏滅後一千五百二十一年也
南無阿弥陀仏をとけるには
衆善海水のごとくなり
かの清浄の善身にえたり
ひとしく衆生に回向せん